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【JNJ】ジョンソン・エンド・ジョンソンの株価下落をみて感じたこと



JNJ:株価急落の理由

私の素直な感想です

HIRA (@Open_JP) と申します。

さてJNJに関して、情報が行き渡り、ほとぼりが冷めたようですので、私が受けた素直な印象を記事に残しておこうと思います。最初にお伝え申し上げますが、私は個別株をやっておりません。したがってミクロ分析や財務分析は全くの素人であることをお断りさせていただきます。

ただ今も勤務先がヘルスケアセクターにあり、製薬会社の現役社員であることから、飛び交っている憶測に対して少々思うところがありましたので、自分のテリトリーである本ブログに書きなぐっておきたいと思った次第です。内容は薄いです。

どうぞ御笑覧ください。

ヘルスケアセクターに対する所感を書いた過去記事です:【VHT】製薬会社の社員は個別株を推奨せず:バンガード・米国ヘルスケア・セクターETF



ロイター報道で急落したけど

既知の訴訟問題だったはず

[14日 ロイター] - 米医薬品・日用品大手、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)株は(2018年12月)14日、10%急落。同社がベビーパウダーにアスベストが含まれていたことを数十年間把握していたとのロイター報道を嫌気した。


このロイター報道で株価が10%急落です。報道された原文もGoogle翻訳という文明の利器を用いてザッと読んだのですが、JNJに纏わり付いている訴訟リスク、訴訟大国における莫大な賠償命令を争う裁判で、JNJに不利な材料が出てしまった直感的に思わせてしまう内容であったことは確かです。しかし信憑性はどうでしょうか。正直これだけじゃ分からなかった。テキストマイニングによるアルゴ取引が反応していたのではないでしょうか。今なお曖昧になっている気がしております。しかしこれは不確実性。今回の唯一にして最大の材料でしょうか。

ちなみに、対するJNJは、米国がん学会(AACR)の調査結果…全米の家庭で使用されていた1970年代以降のベビーパウダーにアスベストが含まれていないことの証明…を武器に、先に争っていた裁判の控訴審でファイティングポーズを取ると意思表示している訳です。エビデンスも十分あるんだから問題ないよとの主張を繰り返しているのですね。本件は数年前からの問題です。



売上高には影響ないはず

医療用製品は特殊なもの

よってこの問題は裁判=訴訟リスクの話かと思います。まるで最近話題のタバコ株みたいですね。それも今後の裁判の結果、莫大な賠償命令が下されるか否かというところが、この問題のキモになっているはずです。したがって、売上高つまり本業に与える影響はほとんどないと考えてよいのではないかと私は思っております。不買運動?個別株投資家の皆様、JNJホルダーの皆様には釈迦に説法かと思いますが、不買運動が業績の問題となるJNJではありません。以下にJNJの2018年3Qにおける各部門の売上高をお示しします。IRから引用した資料です。

今回問題となっているベビーパウダーを扱うカンパニーは CONSUMAR に属します。さて全てのベビー用品の売上が無くなると仮定します。この場合、ジョンソンベビーは CONSUMAR10%を構成するカンパニーになっておりますので、全世界の売上高に比して1~2%程度でしょうか。JNJのCAGRを考えるとき。私はまぁ無視できる水準と思います。

よく混同されがちですが、医療用医薬品や医療機器といった医療機関でライセンスを持つ医療従事者(医師・薬剤師等)が選択や助言をする医療用のプロダクトと、街中の何とかキヨシで販売されているバンドエイド等の日用品に近いプロダクトモノの売り方が全く異なります

もちろんJNJは多国籍企業ですので現地の国の制度により大きな影響を受けますが(個別株投資を行うなら把握必須かと思います)、多くの場合は文字通り、コンシューマー向けの日用品はBtoCのビジネスとなり、医療用医薬品や医療機器はBtoB(もしくは政府当局)といったビジネスとなっています。後者は不買運動の影響を受けません。ましてや自分自身が難病であるときに標準治療として用いられる新薬・医療機器による治療を、ベビーパウダー問題を理由にボイコットするというロジックは成立しにくいと思われます。

むしろ業績は2段目の医療用医薬品(ヤンセンファーマ)にかかっており、記載されている少数のブランドで大半の売上を稼いでいるわけですから、これらの特許の存続期間と後発品対策、競合するプロダクト(と現在開発されている新薬)等を検討する方がJNJの将来を占う上で大事だと思うのです。ヤンセンファーマ最大の競合はアッビィ、ギリアドあたりでしょうか。



所感

裁判の推移とにらめっこする?

よって最初に戻りますが、この問題は裁判=訴訟リスクの話だと思います。本業に対する影響は殆どないのではないでしょうか。したがって「裁判がどう転ぶか、これに賭けるか否か」がJNJへの投資可否を決めることになりそうです。私は個別株投資をしないスタンスですので賭けないと決めているのですが、JNJは多角化ビジネスゆえに、他の製薬企業と比して安定感があると感じておりました。まさかJNJが。やはり個別株は分からないものですね。

最後の最後で、正直な感想を申し上げますと、JNJは割高、人気企業の水準であったと感じております。予想EPSはザックリ見積もって8ドルですよね。そこに悪い材料が出て人気が剝落し、一気にバリュエーション調整がなされた。8ドル(EPS)× 16(当時 S&P500 の予想PER)=128ドル。これが本当の理由ではないでしょうか。だとすれば「買ってはいけない」と誰かがささやくはず。アンカリングは行動経済学で述べられる愛すべきおバカの典型例でしたよね。

お付き合いいただきありがとうございました。