コスト比較の記事ではありません
ETFの安全性について述べたい
HIRA (@Open_JP) と申します。今回は、私が主な投資手法としているETF(上場投資信託)の仕組みをあらためて理解してみたいと思います。とっても便利ですよね。ニューヨーク証券取引所に上場している海外ETFを介することで、世界の株式市場、債券市場、不動産市場、商品市場などなど、何でもアクセスできちゃうんですから。
しかし多くのETF投資の紹介記事は、投資信託との比較こそ沢山あれど、コストの観点だけであったり、注文手法の観点だけであったりと、非常に偏った内容になっていると感じております。
資産の置き場所を検討する上で、最も大事な観点は安全性であるはずです。滅多にないことだと思っていますが、万が一消滅するような資産、万が一正常に機能せず暴落するような資産に、誰が投資しようと思いますか。安全であることは価値です。
本記事では①透明性と②流動性の観点で見ていきたいと思います。
いずれも海外ETFが優れているとされております。
ETFは ①透明性に優れる
透明なバスケットである
第一に、ETFは透明性に優れるといわれております。もちろん、ETFも投資信託も、株式や債券のバスケット=原資産における持分(自分の分け前)を示すことは同じです。透明性における1つ目の違いは、ETFではバスケットの中身が常に(毎日)開示されていることです。よって投資家として自分が何を保有しているか、正確に把握することができます。たとえ自分自身がチェックしなくとも、全世界の投資家から監視されている状況が大事なのです。特にブリッジウォーターのような巨大ヘッジファンドをはじめとする機関投資家が眼光鋭く監視できるので、ここに一定の効果が生まれます。
対して投資信託では、上位銘柄は月報、保有銘柄の内訳が開示されるのは四半期毎、半期毎であり、開示のタイミングも集計作業が終わって数週間後になります。期中はブラックボックスです。開示された時には、もう実際の保有内容が大きく変わっていることも生じ得るのです。タイムラグがあるから。ハッキリしないのは好きじゃない。
インデックス型の投資信託こそ、私が保有するのは○○指数だと盲信してしまい、実際に自分が保有する銘柄(ファンドの組入銘柄)に対する興味が薄くなりがちです。しかしファンド運用の実際ではサンプリング法などが多用されているため(特に先進国株式を対象とするものが多い)、イメージと実態に乖離が生じざるを得ない状況なのです。
投資信託は取引コストに不公平感
透明性における2つ目の違いは、取引コストの透明性です。投資信託の界隈ではつみたてが流行っております。毎日積立なんてこともできますね。さて、誰がその毎日の取引コストを負担するのでしょうか。それは、その投資信託を持つ投資家全員です。投資信託を勉強されている方はご存知だと思いますが、これこそ実質コストの根源です。
そもそも投資信託のインデックスファンドでは、個人投資家から販売会社(例えばSBI証券)を介して運用会社(例えばアセットマネジメントOne)に資金が集まり、運用会社は投資対象の株や債券を買います。また投資家がファンドを解約するときは、ファンドが保有する株や債券を売り、販売会社を通じて個人投資家にお金を払います。
つまり個人投資家の動きに合わせて、運用会社が株や債券の売買を行うため、それぞれ取引コストが発生します。実質コストこそブラックボックスの最たるもの。下手すると仲良く損をしてしまう。
これ不公平ですよね。
自分は一括買付の長期保有でも、バカバカ買う人が隣にいるかもしれない。この無駄なコストは投資信託の保有額に比して、平等(?)に負担することになっちゃいますから。チマチマ買えないことがETFのデメリットと仰るが、タダほど怖いものはないという事です。
出典:楽天・全米株式インデックス・ファンド 交付目論見書
ETFは明瞭会計だ
ETFは、個々人の取引コストを、保有する全員で仲良く負担するなんて事はしません。個々人の取引コストは、平等に買う人売る人だけが負担すればいい話ですよね。ETF=上場投資信託と言われるだけあって、証券取引所に上場しているわけです。つまり売りと買いの間にスプレッドが存在しています。一般的なETFでは、売買スプレッドのなかに取引コストが内包される仕組みとなっているのです。為替取引と同様のイメージです。また証券会社に対しても、取引したい投資家だけが、売買手数料を、その都度、支払います。
これが明瞭会計です。
なぜこれが成り立つか。
ETFの仕組みを理解して私は納得しました。ETFでは株や債券のバスケットを必ずしも売買していないのです(本記事の下部参照)。
例えば、流通市場でAさんからBさんの手に渡ったとしても、運用会社は直接関与しません。個人投資家が行う個別の売買に対して、運用会社に取引コストが発生しないのです。運用会社やマーケットメイカーが監視しているのは、ETFの市場価格というカラクリです。これじゃあ投資信託のインデックスファンドが、海外ETFに経費面で勝てるわけがない。税金も効率的です。
ETFは ②流動性に優れる
ETFの流動性は出来高を超える
経済危機の時こそ、流動性が重要視されます。今お持ちの資産には、平時から潤沢に血液が流れているでしょうか。万が一のとき、全身の血液が減少してきたときに顕在化するのです。流動性リスクを過小評価している方が最近多いように感じております。今お持ちの資産が、いざという時に、買い手がいない状況、フェアな価格がつかない状況に陥るかもしれないリスク。これが流動性リスクです。
ETFは流動性に優れると言われております。
実は、ETFの流動性を測る指標として、出来高や売買金額は、相応しくないといわれております。それはETFのシステム上、上辺の流通量をみているに過ぎないからです。私たち個人投資家が売買しているETFは、証券取引所における市場(流通市場、セカンダリー市場)で流動しているものです。
たしかに個別株の場合、個人投資家にとっては証券取引所にあるものが全てですが、ETFの場合は足りなくなったらETFが発行されたり、増えすぎたらETFが償却されたりします。これらは相対取引(発行市場、プライマリー市場)で実行され、これにより流動性が供給されます。
したがって、ETFの真の流動性は、証券取引所における平均的な出来高に、マーケットメイカー(Authorized Participant, AP)たる指定参加者(金融機関や投資ファンド)が供給する在庫が加わるのです。
出典:アセットマネジメントOne株式会社ホームページ
マーケットメイカーも特定の数社ではなく、大型のETFであれば数十社が参画します。新参ETFはマーケットメイカーの確保が難しかったりするようですので、やはりETFにおいても持続可能性を、投資信託と同じように、規模と歴史の観点でチェックしておきたいものです。
まとめますと、ETFの流動性には(1)流通市場の流動性(2)流通市場外の流動性(3)設定・解約による流動性(組入銘柄の購入や売却による流動性)の3つがあります。
これに対して、投資信託のインデックスファンドには(3)設定・解約による流動性のみ、が存在していることになります。よって相対的にETFの方が流動性に優れることとなるのです。
所感
ETFも理解して活用したい
ETFの優位性を、私なりに勉強してみました。投資入門書にすらETFが出てくる時代ですが、投資信託とETFは全くの別物です。いずれにしても、私はこれからもポートフォリオの主体を、海外ETFで構成し、国際分散投資を継続していく所存です。一方で、アクティブ型ETF、そしてシンセティック型ETFようなキワモノは、ETFの仕組みを考えると危険性を孕んでいるようにも思えてきます。サブプライム危機のトリガーとなり、多くの金融機関をえぐり、リーマン・ブラザーズを退場に追い込んだ、金融工学の核兵器に成るポテンシャルを持っているように感じます。
これからも勉強を怠らず、無知を理由に市場から退場しないよう、精進していきたいものです。
ご覧いただきありがとうございました。
コストの観点では大差なしと考えております。
【コスト比較】インデックス投資…投資信託・海外ETF・国内ETFを比較してみた
投資方針をまとめております。
私の投資