全国民が考慮すべき非課税制度
称賛される理由を伝えたい
HIRA (@Open_JP) と申します。2017年。インデックス投資家、いや、個人投資家の最大のトピックは、つみたてNISAでした。
素晴らしい時代。素晴らしいタイミングです。既存のNISAで足りなかったところを調整した新制度、と私は考えております。
まさに一般市民が長期投資を行うための、最高のパッケージです。株式を用いた長期投資の有用性をあわせて理解すると、そのすさまじい潜在力に気が付くことでしょう。
つみたてNISAの概要
長期・積立・分散の定石
まず、制度の確認をします。金融庁の肝煎りである本制度「つみたてNISA」は、投資に関する優遇制度のひとつです。来年2018年1月より開始されるので、金融機関の店頭や、雑誌、広告でよく目にするようになりました。つみたてNISAは、投資初心者が「投資の成功体験」を得るために、定石を用いることを前提とした制度設計となっており、少額からの長期・積立・分散投資を支援する非課税制度となっております。それゆえ、つみたてNISAは「金融庁の教育教材」といわれるほどです。
出典:金融庁ホームページより |
メリットは非課税期間20年
最大の優遇ポイントは、20年間の資産運用で得られる利益、すなわち「値上がりによる利益(譲渡益)」や「配当金」が非課税になることです。通常は下図のように、利益が出ても20%ほど税金がかかるものなのです。これが非課税になる。一般市民が資産形成を行っていく上で、決して無視できないメリットです。
ただし、制約もある
本制度には、デメリットもあります。第一に、金額。本制度の枠組みで購入できる金額は年間40万円までに制限されています。いくらでも使える制度ではありません。
それはそうですよね。通常の投資口座よりも優先的に使っていく枠が年間40万円までということです。私はここを全額使った後、通常の投資口座を使っていく予定です。
第二に、購入方法。本制度の目的であり、名称にもなっている積立投資を実施させるため、購入方法は累積投資契約に基づく買付(つまり、積立設定による買い)に限られております。
実際には、ネット証券を用いる場合、各商品のページに専用ボタンがついていることと思います(Amazonで買い物をする程度の操作で、完了するでしょう。私は、銀行からの自動引落もセットしていますので、向こう20年、放置することも可能なのです)。
第三に、商品。本制度で購入可能な商品は、投資の定石である長期・積立・分散投資の目的に適したものになっております。対象商品となるためには、金融庁の認可が必要であり、一定の投資信託に限られているのです。
これにより、今まで顧客をカモにしていたムチャクチャな地雷商品の殆どが取り除かれました。ファンドをはじめて選択する投資初心者にとって、背中を押してくれる制約ともいえます(地雷を選べない制約ということです)。線引きについては、今後変更される可能性もありますので、ここでの解説は差し控えたいと思います。
第四に、1口座だけ。銀行口座のように、○○銀行にひとつ、△△金庫にひとつ、と複数の口座を持つことが出来ません。
1人につき、1金融機関に、1口座と限られています。なお、今まで存在していた従来NISAとも併用できません。ここには注意が必要です。
株式との併用が最適解か
投資そのものが理解されていない?
確かに、上述のような制度のメリットは、金融庁や金融機関がしっかりとパンフレットを作成しておりますし、雑誌でも分かりやすく説明されています。しかし、本制度を使う上で、最も大事な中身となる投資そのものについて、説明されている資料は少ないように思います。
ここが投資初心者にとって、大きなハードルとなっている気がしてならないのです。投資をして利益が出たらメリットがある。でも株はこわい。だって損するでしょ、という感じだと思うんです。
これを、エビデンスベースで、ブレイクしていきましょう。
株式×保有期間20年の真の意味
結論から申し上げますと、本制度を使って20年間の長期投資を行う場合、ほとんどの人にとって株式100%が最適解です。損する方が難しい。以下の有名な図をご覧ください。これは、米ペンシルベニア大学経営大学院 教授のジェレミー・シーゲル先生の著書に掲載されている図です。米国を対象とした過去200年のデータを用い、保有期間別で得られるリターンがどうなるかを分析した結果です(インフレ調整済、実質利回り)。
つみたてNISA=保有期間20年をみてみますと、株式は最低値でもプラス(年率1.0%)であることが分かります。
つまり、過去200年において ~ 数々のイベント、世界恐慌や2度の世界大戦があり、テクノロジーの進歩、世界そのものがガラリと変わってきましたが ~ いつから株式に投資を行っても、20年後には利益が出た、全てのケースで損をしなかった、という恐るべきデータです。これは米国のみならず、他の先進国においても長期運用では株式投資が最も有益であることが、他の報告でも知られております。
なお、保有期間が短いと、株式のリスク(バラつき)がそのまま反映され、年利回りの最小値がマイナスになることが分かります。私が従来NISA(非課税期間5年)を積極的に使用してこなかった理由のひとつが、ここにあります。本図が掲載されている書籍には、株式のリターン最小値がプラスとなる保有期間のカットオフは、17年と記載されていたように記憶しています。
一方で、債券は20年間保有したとしても、マイナスになることがあります。ジェレミー・シーゲル先生のデータを見る限り、長期投資の対象としての債券保有は熟考が必要となります。
リスクとリターンと保有期間
よく教科書的に示される上図には、保有期間という概念がありません。
もちろん、この図も大事ですが、これが全てではありません。
つみたてNISAのキモは、株式投資を20年間ずっと継続することにあります。しっかりと継続することで得られるリターンが、非課税となる制度なのです。
中身と制度をセットで理解すると、ここまで称賛されている理由が、ご理解いただけるかと思います(つみたてNISAを推奨する個人投資家の皆さまは、ここまでを含んで、同僚や友人にオススメしていることでしょう)。
つみたてNISAによる節税効果
1年目の40万円を例にすると
ジェレミー・シーゲル先生の著書には、過去200年の米国市場における年利回りの平均値は、おおよそ6%であったと記載されております。これと同様の利回りが20年間、得られたときに期待できる利益と、つみたてNISAによる節税効果を、下図にお示しいたします。過去の平均値を用いた計算ですが、素晴らしい結果です。つみたてNISAの1年目に投じた40万円は、20年後、年利回り6%で運用できた場合、121万円まで殖えていることでしょう。半分程度のパフォーマンスに止まった場合でも70万円まで殖えていることでしょう。
年利回り6%で運用できたとき、利益は「121万円ー40万円=81万円」です。
普通の口座で取引している場合、利益81万円の約20%(=16万円)は税金で取られてしまうので、利益81万円は税金16万円を引いた65万円まで減ってしまいます。よって手元に来るのは「40万円+(利益81万円ー税金16万円)=105万円」です。
ところが、つみたてNISAですと、まるまる121万円が手元に来ます。この税金が取られない差の16万円。これが、つみたてNISAの節税効果です。
普通の口座
40万円→121万円(-税金16万円)
=105万円
つみたてNISA
40万円→121万円(非課税)
=121万円
実際に買うべき投資信託は?
平均を狙うことが最適解の一つ
では株式を対象とする投資信託のうち、どれにすべきか。目移りして迷ってしまう方もいらっしゃるかと思います。
無知に対するリスク回避は分散投資です。私は全世界の株式に分散して投資が出来るように投資信託を組み合わせることをお勧めいたします。なぜなら、世界の中から投資地域を選ぶ行為は、勝者と敗者に分かれるゼロサムゲームと考えられるからです。インデックス投資のバイブルのひとつにおいて、一般人は、プロに負けないために平均値を目指すことが推奨されております(推薦図書:チャールズ・エリス著「敗者のゲーム」)。
新しく執筆した記事に、全世界の株式に投資をする、私の具体例も示しておりますので、あわせてご参照いただければと思います。
具体的なつみたてNISAの始め方
【初心者向け】つみたてNISAのガイド:検討すべきポイントとその順番。
長期間に渡って寝かせるお金になりますが、その見返りは大きいことでしょう。うまく活用して、皆でハッピーになりたいものですね。
ご覧いただきありがとうございました。