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【ベンチマークの視点】それは本当に優良ファンドといえるのか?

本当に優良ファンドなのか

安易に飛びついてはいけない

HIRA (@Open_JP) と申します。

今回の記事では、インデックス投資の肝であるベンチマークについて述べたいと思います。インデックスファンドの目論見書や月報に、必ず記載されている連動対象のことです。

以前とは比べものにならないくらい優良な投資信託が増えてきた今だからこそ、新しいモノに飛びつくのではなく、一度は立ち止まってしっかりと考えたい項目がいくつかあると思っています。

その最たるものがベンチマークだと私は考えております。





最近の流行はコスト比較

つみたてNISAによる流行

金融庁の肝煎りで推進されている新制度、つみたてNISAが、2018年より開始となりました。ツイッターのタイムラインを拝見していますと、もう積立設定を完了したよ、この2つの投資信託で迷っているよ、このようなコメントが散見され、その興味の高さが伺えます。

20年にわたる非課税枠が、本制度の大きな特徴となっておりますので、20年間保有し続けることを前提に、ファンドを選択されるケースが多いと思います。私も同様です。がっつり長期投資をしたいと思っております。

先の記事において度々申し上げておりますが、投資信託を選ぶ上で最も考慮しなければならない項目のひとつが、確実なコストとして発生するマイナス要因、信託報酬であることに違いはありません。

ご存知の通り、これはファンド側に対するフィー(報酬)です。金融庁は、本制度の枠組みで購入できる投資信託の条件に「信託報酬が低いこと」を設けたため、公表されているパンフレットでも大々的に記載され、ようやく顧客本位な環境となってきたように思います。

今までは…特に窓口販売のパンフレットにおいて…信託報酬による差別化は皆無でした。金融業界に対する国からの強いメッセージともいわれています。

信託報酬だけを見て飛びつくな

その一方で、ファンド間の「信託報酬」の差ばかりに目がいってしまい、他の項目をおろそかにしていないか、今一度自問したいと感じている次第です。

例えば、純資産

これも20年間保有し続けることを考えるならば、教科書的にファンドの持続性を測る指標のひとつと言われているわけですから、「確かに信託報酬はリーズナブルだけど、この純資産は少なすぎないだろうか」と立ち止まる、これを大事にしたいものです。仮に途中で償還(ファンドの解散)が起こってしまったら、長期投資を行うという目論見が根本から崩れてしまうからです。

ベンチマークに現れる"姿勢"

そして、純資産ほど大事な項目ではないと思ってはいますが、ベンチマークについて、私が感じたことを書き残しておこうと思います。テーマは金融機関の誠実さです。





ベンチマークを再考する

ベンチマーク=連動対象

そもそもインデックスファンドとは、何らかの指標に連動するように設計・運用されているファンドのことを指します。したがって全てのインデックスファンドは「この指数に連動するように運用します」と、はっきりと宣言します。ここが原点であるはずです。

例として、ファンドAが指標Aに連動するとき、「ファンドAのベンチマークは指標Aである」と表現します。

ベンチマークは運用成果の対照

逆に述べると、ベンチマークこそインデックスファンドの全てであり、拠り所であり、存在意義である、と私は考えております。

アクティブファンドではございませんので、投資家が求めるべきは「ファンドがどれだけ騰がったのか」ではなく、「ファンドがどれだけ正確に連動したのか」ということになります。

投資家や顧客に対する情報公開も、ベンチマークとピッタンコだったのか、少しずれちゃったのか、これを明示することに違いありません。

この考え方を前提に、いくつかのインデックスファンドを精査していくと、首を傾げてしまうベンチマークや月報が、2018年現在も目に付いてしまうのです。

ベンチマークの望ましい例

まずは、あるべき姿をお示ししたいと思います。

現在、つみたてNISAで積立継続中の投資信託「たわらノーロード 先進国株式」からの引用です(月次運用レポート2017年11月30日基準)。本ファンドは、赤枠で囲ったところにも記載されていますが、配当込みのベンチマークを使用しております。




本ファンドのベンチマークは配当金を含んでおります。

本ファンドは分配金が0円、発生しないタイプで、ファンド内で再投資しつつ運用されております。ファンドも、ベンチマークも、配当金を含んで運用していくタイプですから、うまく連動していくはずです。

この前提があるからこそ、ファンドとベンチマークの差が明示され、投資家はレポートを一覧して良し悪しを判断することができます

中身が「分かる」こと
は、不確実性を最も嫌う賢明な投資家にとって、とても大事なことです。一覧して実績が分かる顧客本位のレポートになっていると思います。

首を傾げてしまうベンチマーク

一方で、不思議なレポートをお示しいたします。投資信託「eMAXIS 先進国株式インデックス」からの引用です(【マンスリーレポート】2017年11月30日現在)。

本ファンドは、緑枠で囲ったところに記載されていますが、配当を含まない、配当を除くベンチマークを使用しております。




本ファンドのベンチマークは配当金を含んでおりません。ただしファンドは、先ほどと同様に分配金が0円、発生しないタイプです。配当金に当たる分はファンド内で再投資しつつ運用されております。

すると、表に示されているとおり、ベンチマークに連動せずにズレていくのです。

この時点で意味不明です。

連動対象を存在意義とするファンドがインデックスファンドです。しかし当ファンドは連動対象として設定したベンチマークからどんどん乖離していくのです。

さらに、このレポートを見てファンドの良し悪し、すなわち、ちゃんと連動しているのか、まったく判断できないことになってしまいます。アスタリスクで「~ご留意ください」といわれても、判断材料はどこにあるのでしょうか。配当金要因なんてはじめて聞きました。ブラックボックスそのものです。はたして本当に顧客本位といえるのでしょうか。意外にも、こういったインデックスファンドもどきは、国内では未だに少なくないのです。



さいごに

ベンチマークに配当を含まないのであれば、連動対象との乖離を防ぐためにファンドは分配金を出すべきでしょうし、逆に、分配金を出すつもりがないのであれば、配当金を含んだ指標をベンチマークに設定するべきだと私は思います。

私は、こういった不思議な運用を行うファンドに、大事な資金を預けることは出来ません逃げている気がしてならないのです。今後も私はこのスタンスは貫きたいと思います。

ご覧いただきありがとうございました。

ファンドが連動させる手法をまとめております。
【仕組み】インデックスファンドは、どうやって指標に連動しているのか。