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【コスト比較】インデックス投資…投資信託・海外ETF・国内ETFを比較してみた。



※2019年現在、外国株式の売買手数料の下限額が大手ネット証券において撤廃され、0ドルから一律0.45%の体系となりました。これにより、海外ETFの敷居が低くなり、投資環境が改善されたことになります。以下はあくまで過去の比較であることをご了承ください。


インデックス投資の"手段"は3つ

投資信託は一般市民の最適解だ

HIRA (@Open_JP) と申します。

今回の記事では、インデックス投資の手段として汎用される、投資信託ETFについて、考えてみようと思います。コスト面コスト面、ここだけをフォーカスして比較していきます。

多くの方はインデックス投資を行うとき、投資信託を買い付けるかと思います。投資初心者を含めた多くの人にとっては、投資信託が最適解であると考えております。

圧倒的な利便性が理由です。ファンドが提供する価値は、投資における"手段"としての効率性や利便性に大きなウエイトがあること、これは誤りではありません。また、つみたてNISAの活用を考える上でも、投資信託を通じた投資の優先順位は、非常に高いものとなるでしょう。

現在の投資環境を鑑みると、コスト面でも投資信託とETFに差が小さくなってきたため、投資信託が、多くの人にとってのベストチョイスになり得ると思っております。

ETFという中上級者向けの選択肢も

インデックス投資のもうひとつの選択肢としてETFがあります。今一度、ETFとは何か、定義を読んでみましょう。

ETFとは、証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託で、「Exchange Traded Funds」の頭文字をとりETFと呼ばれています。

たとえば、ETFの代表的な商品として、「東証株価指数(TOPIX)」に連動するETFがあります。TOPIXとは、東京証券取引所によって発表される、東証第1部の全銘柄の動きを反映した株価指数のこと。

このTOPIXに連動するETFは、TOPIXの値動きとほぼ同じ値動きをするように運用されます。つまりこのETFを保有することで、TOPIX全体に投資を行っているのとほぼ同じ効果が得られます。

出典:一般社団法人 投資信託協会

ご覧いただいたとおり、ETFも投資信託の一種であることが分かります。

指数・指標に連動する点では、インデックス型の投資信託と一緒ですね。しかし、通常のインデックス型の投資信託と異なっている点は、証券取引所に上場しているというところです。これにより、売買のルールとコストは株式に準ずることになります。

したがって、ETFは、中身は投資信託で、売買ルールは株式という、投資信託と株式の中間的存在であることが分かります。

海外ETFは、歴史と多様なラインナップが魅力。

そもそもインデックス投資は、お察しの通り、日本が発祥の投資法ではありません。はじめて個人投資家にインデックスファンドが提供されたのは、1976年の米国でした。インデックス投資は約40年の歴史ということになります。

この世界初のサービスを提供した会社がバンガードです。2017年、楽天とタッグを組んで、投資信託ブロガー界隈に衝撃を与えた、世界の2大資産運用会社の一角です。彼らの顧客は個人投資家のみならず、ヘッジファンド、政府機関、年金基金まで多岐に渡ります。

バンガード・インベストメンツ・ジャパン株式会社
https://www.vanguardjapan.co.jp/retail/home.htm

歴史の浅い日本のインデックスファンドの投資環境と比して、歴史のある米国には、魅力的なETFがたくさんあります。正直うらやましいほどです。

国内のネット証券では、外国株式の口座を開設することで米国市場にアクセスすることが可能です。米国株式、例えば Amazon や Facebook などの個別株と同様の売買ルールで、海外ETFを買い付けることが可能となります。



投資信託、海外ETF、国内ETFの長所を比較




あらためて、投資信託、国内上場のETF、米国上場のETFを比較してみたいと思います。

上図は、現在の環境において、投資を検討し得る金融商品における水準を記載しております。おおよそ実際に近い数字になっているかと思います。なお、投資信託の資産規模は、主要なマザーファンドの数値を記載しております。

投資信託のメリット

投資信託は、売買手数料がかからない、100円から投資が出来る、積立設定を用いて自動化できる等々、非常に利便性の高いシステムが魅力的です。

これらはETFにはマネできません。ETFは買付と売却のとき、株式と同様の売買手数料がかかります。注文も毎回手動で出さなければなりません。

ETFだと買付できる最低売買金額100円とはいきません。国内ETFは、TOPIXや日経平均株価を連動対象とする主要ファンド(1306.T, 1321.T)の最低売買金額が約2~3万円となっております。米国市場のETFは、1株単位で取引されているので数千円単位で買えるのですが、一回あたりの売買手数料が高いため、これが実質的なハードルとなり、投資額が十分にないと手数料負けしてしまいます。

また、普通の証券口座で運用する(=NISAではない)とき、ETFを保有する投資家は定期的に配当金が得ることになりますが、これに対して国内で課税されます(約20%)。

多くのインデックス型の投資信託分配金を出さないため、投資先から得た配当金はファンド内にそのまま入るため課税されません

配当金が投資額の2%だと仮定したとき、その20%にあたる0.4%を繰り延べることができます。課税で元本が減らないという考え方です。この点も、投資信託のメリットと言えそうです。

ETFのメリット

ETF、特に海外ETFがインデックス界隈で議論を巻き起こす理由は、その魅力的な信託報酬(経費率、Expense Ratio)にあります。圧倒的にリーズナブルなのです。国内の投資信託の信託報酬が改善されてきたとはいえ、未だに優位性を示しています。

また歴史が深いこと、米国に世界中の投資資金が集まっていること等の理由により、海外ETFの資産規模は巨大です。

世界最大のETFであるSPYの資産規模は、なんと約30兆円です(2018年1月 現在)。セクターETFであっても数千億円の資産規模をもっております。例えば、P&G、コカコーラ、IQOS(アイコス)を販売するフィリップモリス等102社に分散投資を行うETF、VDC(バンガード®・米国生活必需品セクターETF)のETF純資産額は約4000億円であり、インデックス型の投資信託のマザーファンドをも凌ぐ規模です。

さらにバンガードのETFに限っていえば、ETFが他のファンドと合同でインデックス運用されるため、公表されているETF純資産額よりも、さらに巨大なファンドを形成、運用されています(マルチ・シェアクラス構造)。VTI(バンガード®・トータル・ストック・マーケットETF)の場合、単独のETF純資産額は約10兆円ですが、マルチ・シェアクラス構造のトータル資産は50兆円規模といわれております。インデックス型の投資信託マザーファンドの100倍がゴロゴロある。ETFの本場ならではです。

投資対象の多様さ海外ETFが誇る大きなメリットです。詳細は省きますが、世界中の様々な指標に投資が出来ます。地域以外にも、グロース株とバリュー株、高配当、セクターETF、大型株・中型株・小型株と、様々な切り口でポートフォリオを構築することが可能です。残念ながら国内のインデックス型の投資信託は、この域に到達できておりません。海外ETFと比較しようにも国内の投資信託には存在していなかった、ということがあり得るのです。

また少し難しい話となりますが、実は、ETF投資信託と全く違う仕組みとなっています。その結果、運用会社にコストがかかりにくい構造となっているため、圧倒的に低い経費率を実現しております。また流動性(換金のしやすさ)に優れる、透明性に優れる(情報開示・コスト負担)といった、大事な資産を長く育てるために重要なメリットがあります。

私がETFを第一選択とする理由です。
ETFと投資信託の違い。実は、質的に全く違うものだった。



これに対して国内ETFは、個人投資家に投資信託ほど浸透しておらず、限られた投資対象、アセットクラス(資産クラス)の銘柄に偏っております。

国内株式に連動するものは資産規模も大きく、有力な選択肢になるものがいくつかあります。しかし、先進国株式や新興国株式に連動する国内ETFは資産規模に乏しく、償還されるニュースもしばしば耳にするため、長期投資に適している対象であると明言できない状況です。また売買が活発でないため、大事な資産を投じる先として流動性リスクの懸念を払拭できません。

国内ETFは、TOPIXや日経平均株価を連動対象とするものに絞ったほうが賢明だと思われます。



投資信託、海外ETF、国内ETFのコスト比較

投資金額で分けて考えてみる

上述の通り、実際に私たちが投資を行うとき、投資信託とETFでは生じる手数料(コスト)の内容が異なっています。以下の項では、多くの個人投資家が実際に取引をする金額レンジの例を、お示していきたいと思います。

1000円を投資するとき



投資金額が1000円の場合、いずれのETFも最低売買金額を下回っております。

投資信託は、投資額1000円という少額であったとしても、インデックス投資の環境を提供するのです。これはETFにないメリットです。素晴らしいですね。

よって、1000円の投資額では、投資信託唯一の選択肢となります。

1万円を投資するとき



次は1万円です。月1万円ずつコツコツと投資したいと考える方は多いのではないでしょうか。

投資信託
はもちろん買付可能です。

国内ETFは最少売買金額に届いておりません。

海外ETFは銘柄によっては株価が1万円を下回っているため、買付自体は可能な銘柄もあります。しかし、売買手数料が片道550円(最低金額 $5 +為替コスト)となり、往復で約1100円の手数料がかかってしまいます。投資額の10%を超える手数料です。現実的ではありません。

よって、1万円の投資額では、投資信託唯一の選択肢となります。

5万円を投資するとき



次は5万円です。全ての商品が買付可能となります。

ここからみていくべきは売買手数料と信託報酬です。

国内ETFをみてみたいと思います。国内ETFの出番があるかもしれません。

インデックス投資家の多くは時価総額加重平均を優先すると思いますので、日本株式のアセットクラスにおける指標には、日経平均株価ではなくTOPIXを選択されると思います。

この場合、国内ETFの最有力候補はTOPIX連動型上場投信 (1306.T) になると思います。日銀がETF買い入れで使用しているとの市場観測で有名です(日銀が保有しているものを償還できるはずがない、お墨付きと勝手に考えております)。

投資信託でTOPIXを連動対象としているものの信託報酬は、実質コストでおおよそ年間0.2%と推測されます。これに対して国内ETF (1306.T) の信託報酬は年間0.11%です。わずかではありますが国内ETFに一定のアドバンテージがあります。また、5万円の取引額ですと、証券会社のコースによっては、国内ETFの売買手数料が無料になるところもあります。コスト面では国内ETFも良さそうです。



ただし、国内ETFを選択すると買付時の発注の手間が毎回発生します。手間がかかることを重く考慮するのであれば、投資信託の優位性は保たれることでしょう。

一方で、海外ETFですが、5万円ではまだ売買手数料がかさみます。配当金に対する課税もトータルリターンを押し下げます。ただし、投資信託と比較して信託報酬に年間0.15%の差がありますので、選択肢から完全に除くほどではないかもしれません。

よって、5万円の投資額では投資信託一定の優位性があります。しかし、手間を惜しまないなら国内ETF、さらに拘りがあるならば海外ETFも選択肢に上がりそうです。場合によっては5万円×2-3ヶ月分と一度にまとめることで海外ETFを選択することも合理的だと思います。ただし海外ETFは、投資信託より管理に時間と労力を要します。私達は長期投資を目的としているはずです。各々の環境を鑑みて、長く続けられるか、しっかり考えたいところです。

15万円を投資するとき



次は15万円です。もちろん全ての商品が買付可能です。

投資信託国内ETFの比較は、5万円以上では同様ですので以降、割愛します。

様相が変化するのは海外ETFです。

取引額が$1,111、2018年1月現在の為替レートで約12万円を超える投資額になりますと、海外ETF売買手数料0.45%(税抜)+為替コストとなります。往復で約1%です。

この水準になると、売買手数料によるギャップを、信託報酬のアドバンテージをもって埋めるまで、さほど時間を費やしません。おおよそ保有期間6年でキャッチアップします。6年以降はトータルコストの優位性が海外ETF>投資信託となります。しかし実際には、配当金に対する課税海外ETFのトータルリターンを押し下げます。証券会社によっては投資信託の保有額に応じたポイント還元があり、これも両者間の差を縮めます。

よって、15万円の投資額では、どの方法を選択してもコスト面で大きな差はないように思えます自信を持って投資を継続できる金融商品投資したい連動対象のある金融商品を選択しましょう。それは手間であったり、資産規模であったり、想い入れであったり、さまざまな要素が絡んでくると思います。いろいろ計算してみましたが、数千円でもお小遣いから追加投資に充てるほうが影響大です。どーんを構えて投資しましょう。

100万円を投資するとき



最後に、100万円です。もちろん全ての商品が買付可能です。

海外ETF売買手数料上限$20、つまり片道2200円(税抜)+為替コストとなり、以後、投資額が増えたとしても売買手数料は上昇しません。取引一回の金額が大きいほど、売買手数料の影響が小さくなります。

投資額15万円の時は、6年間で投資信託を上回っていましたが、投資額100万円になると3年間で、トータルコストの優位性が海外ETF>投資信託となります。しかし先ほどと同様、配当金に対する課税海外ETFのトータルリターンを押し下げ、投資信託の保有額に応じたポイント還元が両者間の差を縮めます。

よって、100万円を1度に投資する場合には、海外ETF検討する価値が十分あると思われます。ただし、海外ETF為替取引株式取引を行うため、投資信託より管理に時間と労力を要します。現状の投資環境では、必ずしも海外ETFしなければならないほどの差はないわけですから、これらを天秤に掛けて、投資信託にするのか、海外ETFにするのか、ライフスタイルに合わせて決定したいものです。



まとめ

ETFは、玄人向けの金融商品なのか

投資額1000円から100万円まで、投資信託とETFを考えてみました。全てを通じていえるのは、ここ数年でインデックス型の投資信託が一気に改善されたため、国内ETF海外ETFに、パフォーマンスで肉薄したということです。

とくに、2017年のつみたてNISAを受けた投資信託の低コスト化のブームは、仮想通貨の流行に紛れて、インデックス投資家の一大トピックでした。

あらためて2018年の今、ETFのポジショニングを考えると、投資が好きな玄人向けな金融商品に追いやられているのかもしれません。がんばって労力と時間を費やしたとしても、自動化した投資信託にパフォーマンスでなかなか迫れないともききます。

むしろ自動化したほうが、心理的バイアスが取り除かれ、好パフォーマンスにつながる可能性がある、とまで言われ始めています。

将来を考える

今回検討した数値は、現行の投資環境をもとに算出しております。したがって、今後の投資環境に改善されれば、結果は変化します。

想定される変化としては、投資信託信託報酬は今後も改善に向かうと考えられます。これにより、ETFとの差はさらに縮まることが予想されます。

一方で、ETF売買手数料に改善の余地があります。特に海外ETF売買手数料が引き下げられた場合、さらにトータルパフォーマンスは向上します。

いずれにせよ、個人投資家にとって、投資環境は改善してきております。もう全部リーズナブルです。税制と合わせて、今後の動向に注視していきたいところです。

所感

投資信託ETFの差を、コストで語る時代は終わったのかもしれません。

今後は、質的な差、例えばファンドの継続性実質コストの不透明さ利便性運用実績運用会社の姿勢がフォーカスされ、比較されていくような予感がします。さらなる投資環境の改善に期待したいものです。

私がETFを第一選択とする理由です。
ETFと投資信託の違い。実は、質的に全く違うものだった。
ご覧いただきありがとうございました。