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【ノウハウ】PBR は CAPE(シラーPER)のように長期投資のリターンを示唆する



CAPE(シラーPER)に匹敵する PBR

長期投資で活きる参考指標

HIRA (@Open_JP) と申します。

今回の記事では、長期投資を志す個人投資家にとって、決して無視できない、ひとつの知見をご紹介したいと思います。もちろんインデックス投資家も然りでございます。

この知見は、長期投資予測リターンは計るために、PBRを見るべきだということを示唆しております。文献の図表データを後程ご案内いたします。

以前より当ブログでは、StarCapital AG 社や Research Affiliates, LLC. 社のホームページをご紹介しつつ、CAPE(シラーPER)の有用性について述べて参りました。PBRも、CAPE(シラーPER)も、いま自分が立っている場所を知ることは、長期投資において強力な武器となるに違いありません。



PBR と長期投資のリターン

PBR と長期リターンは相関する



1つ目のデータです。1979年12月12日から2015年5月までの期間におけるPBR長期投資(10~15年)の年平均実質リターンの間に相関が見られることがわかります。これは StarCapital AG 社の研究(StarCapital Research, January 2016, PREDICTING STOCK MARKET RETURNS USING THE SHILLER CAPE)より引用したもので、インフレ調整、現地通貨建、配当込のデータです。

研究の主題はCAPE(シラーPER)でありますが、PBRも同水準で有用であることが示唆されております。CAPE(シラーPER)についても同様のグラフが掲載されておりますが、数式の下に示されているR2(どのくらい説明できるか;決定係数、寄与率)の値で比較すると、実はPBRの方が高値となっているのです(cf. CAPEの場合に得られる数式に対して R2=0.4861)。

したがって、意訳にはなりますが、長期投資(10~15年)を行うならば、ベースライン時、すなわち買付時PBRは実質リターンの約55%を説明することを示唆しております。これを無視することができるでしょうか。私は海外ETFを用いて長期投資を実践しておりますが、この知見を知って以来、必ず投資先のPBRをチェックするようにしております。

各国の PBR と長期リターン



2つ目のデータです。各国におけるPBR長期投資(10~15年)の年平均実質リターンの関係を示しております。先ほどと同じく1979年12月12日から2015年5月までの期間におけるデータで、インフレ調整、現地通貨建、配当込です。国によってR2(どのくらい説明できるか;決定係数、寄与率)の値にバラツキはありますが、多くの国・地域において有用であることが示唆されております。

ではPBRについて、どこの値をカットオフとして買付を行うべきか。じっくり考えると頭を悩ませてしまいますが、年平均実質リターンでマイナス値が観測されているPBRがどこであったのか、もちろん過去のデータではありますが、これは参考となる情報だと私は思います。

PBR とドローダウンの関係



3つ目のデータです。バリュー投資のような考え方、「安全域」のような考え方だと思います。1979年12月12日から2015年5月までの期間における買付時のPBRとMSCI諸国における最大ドローダウンとの関係を示しています。インフレ調整、現地通貨建、配当込のデータです。

想定されるところですが、PBR低値で買付けた場合のドローダウンは小さく(図の左側)、PBR高値で買付けた場合のドローダウンは大きくなっております(図の右側)。



根拠をもって投資をしたい

長期投資のお供に PBR を

今回の記事では、長期投資を志す個人投資家にとって、決して無視できないPBRの知見をご紹介させていただきました。

(1)長期投資(2)分散投資については学術的・建設的な議論が行われており、バンガード社はここに(3)低コストの理念を加えました。この3つこそ、現在のインデックス投資の基本となるものだと思っております。

一方で、積立投資もしくはドルコスト平均法については、やや疑問が残る米国発祥の営業トークとの認識です。毎月買付けて欲しいのは金融機関側に違いないからです。また買付タイミングを分ける時間分散などポートフォリオのリスク低減に全く寄与しないことは明らかです。

確かにベンジャミン・グレアムは著書の中でドルコスト平均法について述べておりますが、これはインデックスファンドが存在しない個別株投資の文脈であり、また投資情報も現在のように個人まで潤沢に行き渡っていない世界の話であると認識しております。ゆえに、私は「絶対遵守しなければならない投資法ではない」とのスタンスでおります。もちろん否定もいたしません。

ただ学術的に、買付時のバリューエーションこそが、長期投資の年平均実質リターンを説明する可能性が高いと分かっている以上、私はこれを注視していきたいと考える次第です。

ご覧いただきありがとうございました。



株式は地域別のバリューで判断します。
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