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【すべて年利回りに】金融商品を比較するときの尺度…貯蓄性保険の一例。

金融商品の比較に、共通の尺度を

どれが得をするのか知りたいとき

HIRA (@Open_JP) と申します。

今回の記事では、金融商品の比較方法について述べたいと思います。ネット証券を開設して、さてはじめようとログインすると、金融商品の数の多さに驚く方も多いと思います。

ニュースで耳にしたことがあるもの。よく分からないアルファベットもの。流行のもの。住宅ローンや奨学金、保険にも加入できる状況かと思います。資本主義社会に生きる私達は、数多くの金融商品について、考える機会があり、選択肢があります。これは恵まれていることです。

しかし、難しい商品が多いことも金融の特徴です。株式と保険を比較することはできるでしょうか?それでは、"定規"となる考え方のヒントを、ご提案したいと思います。



株式と保険を比較するためには?

株式。債券。定期預金。これらの「伝統的な金融商品」は、シンプルで分かりやすいため、その特徴を理解して、比較することは、決して難しくありません。カンタンに子供にも説明できることでしょう。

これに対して、保険はどうでしょうか。特に、貯蓄性保険…養老保険、終身保険、個人年金といった金融商品は、どうでしょうか。カンタンに説明できるでしょうか?

保険は巧妙な金融商品だ

保険は「安心のために・万が一のために」と謳われるので、安心のため=安全なもの(=損することはないもの)という大きな誤解を招きやすい金融商品です。金融商品ですから、本来は株式や債券と同じ土俵です。共通点はどこかに存在しています。むしろ保険が投資であることを自覚されていない人のほうが多いように感じております。

さらに、貯蓄性保険の世界では、新たな用語として解約返戻金返戻率なるものが登場します。税金のお話、生命保険料控除も関わってきます。保険料の払い込みをクレジットカードにすることで、約1%ほどポイント還元を受けることもできます。リターンに影響を与えるものが、本当にいろいろあって、理解が大変です。

したがって、保険は「複雑な金融商品」です。複雑な金融商品は、一般市民の知識(=金融リテラシー)では理解しきれないことがしばしばあります。その結果、営業マンがレクチャーしてきた部分だけを理解し、信じてしまうことで、誤った判断を下してしまう可能性があります。

ほとんどの複雑な金融商品は、リスクや手数料を隠すように、うまく設計されているからです。株式よりもヤバイやつだと私は思っております。販促資料に書かれている数字は、全て疑ってかかりたいものです。

終身保険の一例

過去の無知な私は、貯蓄性保険の終身保険個人年金に加入しており、現在も継続していることを、先にご報告させていただきます。では具体例として、私の加入している終身保険を、みてみたいと思います (若干フェイクを入れます、ご了承ください)。

保険種類:低解約返戻金型終身保険
保障内容:死亡・高度障害保険金額400万円
保険期間:終身
払込期間:60歳まで(34年)
払込金額:年82000円→払込総額:288.8万円
低解約返戻金期間満了後の解約返戻金:316.8万円
まぁ、よくある終身保険ですね。もし私が保険屋の営業マンになったとすれば……

① 加入から解約までの間、生命保険にあたる400万円の死亡保障が得られます。これは万が一の時、お葬式の費用をペイできる程度の金額です。ご家族に迷惑をかけないための最低限の用意といえます。

② 将来的には、60歳で解約すれば316.8万円を受け取ることができ、これは支払総額の288.8万円を上回ります。銀行にお金を預けていても全く増えないでしょう。65歳の公的年金の受給開始までを補う、老後資金のための資産形成にもなります。

③ さらに生命保険料控除を受けることが出来るので、節税ができます。これはすぐに得られるメリットです。ちょうど年間の払込金額 8万円が生命保険料控除の上限なのですが、この場合、今の手取りを毎年1万円ほど増やすことができます。

年8万円を貯金しつつ、年1万円の税金が戻ってくるのです。いかがでしょうか…こういう話法を展開しつつ、結婚適齢期、若年層の顧客開拓を考えるでしょうか。





年利回りでスッキリ!

相対的に有利な商品を選ばなければならない

営業マンの話法の通り、上述の保険にもメリットがあります。内容は、だいたい正しいと今も思っていますし、間違いないのです。そもそも60歳まで解約しない前提であれば、元本割れを生じることはなさそうです。

ただし、注意しておきたいのは、「10のメリットがある商品」と「50のメリットがある商品」が世の中にあるのであれば、「10のメリットがある商品」を選んでしまうと「」であるということです。それは相対的に割高な商品に投資を行うということです。

家計管理・資産運用は限られた資金の中でおこなっていきます。それゆえ、最大化、最適化、効率化しなければなりません。相対的に割安な商品を選択しなければなりません。

したがって、なんでも「増えるものならOK」という話ではなく「今ある金融商品の中で相対的にGoodだね」という判断でなければならないのです。相対的な判断を下すには、比較するステップが必要です。また常に情報収集を行い、自分が買える金融商品を網羅的に把握しておくことも重要です。

年利回り○○%に揃っていれば比較できる!

皆様が車を購入されるとき、いきなり車1台だけをみて購入することは少ないことでしょう。絶対に比較するはずです。他社や他ディーラーを比べるでしょうし、そもそも店舗に行く前には、セダンにするか、SUVにするか、軽自動車にするか、車種を比較して判断をしているはずです。

金融商品を、平等に比較するには、どうすればよいのでしょうか?

私は「年利回り」をオススメしております。

全ての金融商品について、得られるリターンを「年利回り」にして比較するのです。一般的に、株式の年利回りは6%程度と言われておりますし、日本国債はマイナス金利のため0%前後です。保険も年利回りにすれば、株式、債券、定期預金、あるいは預金と同じ土俵で比較できます。




ExcelでRATE関数を使う!

終身保険の年利回りを求める

それでは、上記の終身保険を「年利回り」に直してみましょう(営業マンが目の前にいるなら、計算をお願いすればいいと思います。年利回りを計算できないような素人なら、保険の説明に不備がある可能性がありますので契約を止めておきましょう)。

上述の終身保険は、毎年82000円ずつ積み立てていき、60歳で受取金額316.8万円が得られる金融商品です。払込期間は34年。これを計算するためには、積立と複利を考慮する必要があります。数学が得意な方は手計算していただければと思うのですが…私は大のニガテです。

そこで、Excelの力を借りたいと思います。

積立複利を考慮して年利回りを出力する素晴らしい関数があります。RATE関数です。年間払込額がマイナスであることにご注意ください(ちなみに、受取金額を評価額に置き換えれば「つみたてNISA」の年利回りを求めることができます。要チェックです!)

セルに、以下の数式を入力すれば、結果が返ってきます。

=RATE(運用期間,-年間払込額,0,受取金額)

以下の結果、返ってきた数字は…
0.76%です!

保険種類:低解約返戻金型終身保険
保障内容:死亡・高度障害保険金額400万円
保険期間:終身
払込期間:60歳まで(34年)
払込金額:年82000円→払込総額:288.8万円
低解約返戻金期間満了後の解約返戻金:316.8万円

※今回の場合
=RATE(34,-82000,0,3168000)

この保険は、年利回り0.76%(固定金利)ということになります。正直少ないですかね。確かに銀行預金よりは高い利率ですが、資金を拘束しつつ、固定金利で、60歳まで年利回り0.76%を得るという選択…ちょっと微妙すぎます。

生命保険料控除を加味すると

しかし幸いにも、生命保険料控除による節税で、毎年おおよそ1万円が34年間戻ってくるので、毎月の払込金額を1万円引いて年72000円とみなし、年利回りを再度求めてみます。

節税を考慮
=RATE(34,-72000,0,3168000)

返ってきた数字は…
1.51%です!

節税まで考慮したリターンは、年利回り 1.51%(固定金利)ということになります。節税効果、思っていた以上に大きいようですね。私も少し驚きました。年利回りが約2倍になっています。

この結果から、あえてペナルティを受けてまで解約する必要もないかな、そのまま放置しようという判断に至っております。意外にデフレが続きそうじゃないですか、今の日本は。生活防衛資金のひとつとして、このポジションを持っていてもいいかな、という甘めの考えです。



さいごに


以上のように、Excelを活用することで、誰にでも年利回りを計算することができます。

私が今回申し上げたかったことは「年利回り」を金融商品の比較に活用してはいかがでしょうか?というご提案です。全ての金融商品は「年利回り」を求められるはずです。買付手数料も、為替コストも、信託報酬も、ポイント還元も、全てを反映させることができるはずです。

次回の記事では、この「年利回り」の考え方を国際分散投資で活用するとき、必ずチェックしておきたいことを纏めたいと思います。キーワードはインフレ率です。

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【利回りに騙されるな】実質リターン、名目リターン、インフレ率を知れ。

ご覧いただきありがとうございました。