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【VHT】バイオ医薬品企業の脅威... バイオシミラー、バイオ医薬品の特許切れ



バイオ医薬品の特許切れとバイオシミラーを知ろう

VHTの核となる製品、バイオ医薬品の宿命

HIRA (@Open_JP) と申します。

バイオ医薬品企業の株主に巨額の利益をもたらしたバイオ医薬品も、いずれはライフサイクルの末期、特許切れを迎えます。そして、そこにハゲタカがやってきます。バイオシミラー(バイオ後続品)です。今回の記事ではバイオシミラーについて少し詳しく述べたいと思います。前提となる知識、バイオ医薬品については、以前の記事をご参照ください。

バイオ医薬品については、以下の記事にまとめております。
買う前に学ぼう バイオ医薬品と市場:バンガード・米国ヘルスケア・セクターETF





医薬品の特許切れ

独占製造販売権と特許切れ

そもそも医薬品は、特許という絶対的な参入障壁により、新薬を独占的に製造・販売をすることが出来ます。いわゆる後発品ジェネリック医薬品)や、バイオ後続品バイオシミラー)は、特許が切れたところにやってくるのです。リーズナブルな研究開発費で製造販売できるため、一気に複数社が参入してくることが多く、熾烈な価格競争が発生します。

4つの特許

医薬品の特許は、大きく4つあります。①新規の物質のものに与えられる物質特許、②その物質の使い方、つまり新規の効能・効果に与えられる用途特許、③大量生産に必要な工場設備など、新規の製造方法に与えられる製法特許、④製品としての医薬品の安定性を高める添加剤の比率など、製剤化に関する新しい工夫に与えられる製剤特許です。

業界で「特許が切れる」とは、多くの場合、①物質特許が切れることを指します。有効成分に関する物質特許が切れたならば、仮に他の特許が残っていたとしても、製法や添加物を変更することによって、特許を回避できる可能性があるからです。





特許切れとバイオシミラー

バイオシミラーとは?

バイオ医薬品の特許が切れたときに、市場に襲来するものがバイオ後続品、バイオシミラーです。なぜ、他の医薬品のように後発品、ジェネリック医薬品といえないのでしょうか。あらためて、定義を確認してみたいと思います。

バイオシミラーは、バイオ医薬品の本質であるアミノ酸配列は先行品と同一ですが、細胞株や培養工程は製造業者により異なることから、糖鎖や不純物の割合など先行品と完全には一致しないものの、厳格な品質試験、薬理試験、毒性試験及び臨床試験によって医薬品としての同等性/同質性が検証されています。
出典:バイオシミラー協議会

バイオ医薬品は、低分子医薬品と異なり、非常にサイズが大きいタンパク質を有効成分としています。その大きさ、複雑さのため、同一のものを作ることが困難を極めるのです。自転車であれば、程々の技術があれば完全にコピーできることでしょう。しかし、航空機だったらどうでしょうか。どうしても、細部には違いを生じてしまいます。

また、大量生産には生きた細胞を用いています。個体差があります。少しの生育環境の差、例えば培養する設備の違いも、生産に影響を与えます。それゆえ、バイオ医薬品においては、特許切れによって上市されるものをバイオ後続品、海外では似たもの、シミラーと表現するのです。

バイオシミラーの難易度は高い

化学合成で大量生産をおこなう低分子医薬品であれば、生産物にバラツキが少なく、比較的安定した物質であるため、難なく後発品(ジェネリック医薬品)を作り上げることができます。

しかし、航空機は簡単にできません。たとえ完全な設計図があったとしても。高度な技術水準バイオシミラーの研究開発や大量生産に求められるからです。ある程度の研究開発費も必要です。

それゆえ、低分子医薬品のように乱発することがかないません。現在明らかとなっているバイオシミラーの開発品も、大型バイオ医薬品に限られており、かつ高い技術力を持つ先発品メーカーグローバルメガファーマが手掛けるケースもみられます。

バイオシミラーの開発状況

それでは、現状のバイオシミラーの開発状況を見てみたいと思います。以下の図は、国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部の公式ホームページより引用したものです。



ご覧の通り、売上規模としてメジャーなバイオ医薬品、例えば、ヒュミラ、レミケード、マブセラといった品目には、もれなく特許切れを見越した開発が進捗していることが明らかとなっております。

また、開発を明らかにしていない企業もあり、開発企業も単独であったり、複数であったり様々です。さらに、Samsung のような異業種からの参入も確認されております。正直なところ、バイオを新規参入の異業種に扱えるのか、私は興味深々です。また国内の例としては、ジーンテクノサイエンスは持田製薬とがん領域で、千寿製薬と眼科領域で開発を進めていることが明らかとなっておりますが、その品目は公表されておりません(2018年2月現在)。



さいごに

ヘルスケアセクターはETF(VHT等)で分散投資を徹底したい

私は、日進月歩の生命科学の発展に、魅力を感じております。ボラティリティの高い国内バイオ株はバブルだ、ギャンブルだといわれます。しかし、ITと同様、実際の技術進歩は目覚しいものがあります。生命科学の果実は、私たちの未来、より健康的で明るい人生に、寄与し得ると確信しております。

しかし、特許ビジネスとも呼ばれる製薬のビジネスモデルの特殊性は、夢とは間逆の法律や制度の世界なのです。たとえ巨額の利益をもたらしたバイオ医薬品であったとしても、必ず"寿命"がやってくるでしょう。今、大型バイオ医薬品に業績が支えられていたとしても、次世代も、次々世代も、新薬を創出し続けることができるか否か。企業の持続性につきまとう開発リスク。誰にもわかりません。

さらに、個別企業について、保有する特許を完全に把握することは困難を極めます。不透明かつ複雑です。ひいては訴訟リスクが常に存在する業界ともいえます。それゆえ、ヘルスケアセクターに対しては、無知に対するリスクヘッジとしての分散投資、せめてセクターETFをお勧めいたします。私も徹底しております。従業員持株会も、一切しておりません。

ご覧いただきありがとうございました。

製薬会社のビジネスモデルについては、以下の記事にまとめております。
製薬会社の社員は個別株を推奨せず:バンガード・米国ヘルスケア・セクターETF
VHTの保有銘柄については、以下の記事にまとめております。
上位50銘柄を一覧してみよう:バンガード・米国ヘルスケア・セクターETF